ナレッジ共有ツールの移行について(esa→Notion)
ナレッジ共有ツールの検討と移行
皆さんの組織ではナレッジ共有ツールを使っていますか?
今はたくさんのナレッジ共有ツールが世の中にあり、業務の属人化解消や知見共有のためにとても便利に使えます。
Google DocsなりOffice365のWordなりでの共有ももちろん有効ですが、ナレッジ共有に特化したツールを使用したほうが より効率的かつカジュアルな情報共有が可能 になります。
我々朝日放送グループホールディングス DX・メディアデザイン局では、現在ナレッジ共有ツールとして「Notion」を使用しています。
ですが、実はその前は「esa」というナレッジ共有ツールを使用していました。今回はその移行にあたって考えたことをまとめた記事となります。
まずはそれぞれのツールについて紹介しますね。
esaとは
esa は、情報を育てるをコンセプトにしたナレッジ共有ツールです。
Markdown形式で書いたメモをそのまま保存していけます。
esaで特徴的なのは、 「Save as WIP」としてWIP(work in progress=作業中)として書きかけの状態だとアピールしながら保存できる 点です。
こうすることで、 メンバーは「書きかけ」と認識しながら他人のメモ等をのぞき見できる わけですね。その上で、完成したら「Ship It!」として、WIPを外して公開することができます。
これ、そう聞くだけだと今一つしっくりこないかもしれませんが、個人的にはかなり素晴らしいコンセプトだと思っています。作業ログなんかはWIPとしてどんどん記録してもらえたほうが、誰がどんな作業をしているのか、そしてどんなことを考えているのかがよくわかるのです。作業途中ということを把握した上での軌道修正のコメントなんかも送れます。
何よりもデザインが可愛さと使いやすさを両立していてとても素敵なんですよね。共同編集もできますし、議事録の作成なんかにも向いています。
Notionとは
一方の Notion は、「コネクテッドワークスペース」ということで、もちろんナレッジ共有もできるのですが、タスク管理やWiki作成などなんでも出来てしまう優れものです。
最近ではNotionで作ったページをマニュアルとして外部公開している企業も見かけるようになりましたし、Notion AIという形でLLMの力を借りることもできるようになりました。
esaがシンプルなのに対し、こちらはとにかく多機能です。使いこなせればかなり強力なツールとなります。
ちなみにNotion自体は実は当初京都で開発されたもの…というのも有名な話かもしれません。
なぜesaからNotionへ移行したか?
前述の通り、弊社では2年ほど前にesaからNotionへの移行を行いました。
なぜそうしたかというと、ある程度esaで「情報共有」というものを理解できたので、さらに多機能なもので統合的に管理していこうと考えたからです。
当時はNotionの日本語版が未リリースだったりNotionを使っている企業もまだまだそこまで多くなかったりでなかなかに手探りでしたが、結果的には移行は成功しました。
今はNotionもだいぶ進化しまして、日本語も対応していますし、以前よりかなり使いやすくなっていると感じます。(機能も増えているので少し初見だと複雑に感じるところもあるかもしれませんが)
以下、どのようにして移行したかの方法論をまとめます。コード本体はないですが、考え方としては参考になると思います。
esaからNotionへ移行する際にしたこと
マークダウンファイルとしての吐き出し
esaではデータのエクスポート機能が提供されています。
この機能を用いて「ダウンロードをリクエスト」すれば、データのエクスポートが可能です。(しばらく待つとzipファイルで送られてきます。)
esaでは画像等のファイルについては自前のAWS S3バケットを設定出来たので、設定している場合は記事本体のMarkdownファイルのみのダウンロードで情報としては事足りることになります。
もし外部S3バケットの設定をしていない場合は、ファイルのダウンロードもスクリプト等で実施しなくてはいけません。
「フォルダ」を「タグ」へと再割り当て
esaのいいところとして、 ページタイトルをスラッシュ区切りにすればフォルダ階層のように仕分けられる というのがあるのですが、Notionにはそれがありませんので、フォルダ階層にあたる内容をタグに置き換えました。
上記はesaでは DXMD/member/takuya_ban/2019/07/30/作業ログ
のような形で記述していたページをそれぞれタグに置き換えた場合の例です。
一応、 esa
というタグも追加で付与し、 esa
由来の記事を簡単にフィルタできるようにしています。(作成者は今回全て「esa」となるようにしておきましたが、さらに手を入れればNotion側の作成者とesa側の作成者を連携して移行することもできるかもしれません)
タイトルにesa由来であることを明示
タイトルには [esa ページ番号]
としてesaからの記事であること、esa内でのページ番号(順番に振られます)を明記しました。
こうすることで、Notionになってから追加された記事との区別を付けることが出来ます。アイコンもesaっぽいヒヨコにしておきました。また、ページ番号を含んでおくことで、以前のページ間の参照にも対応が可能です。
esaの作成日時・更新日時を記事に追加
作成日時・更新日時は記事本文内に記載しました。
恐らく当時はNotion側の「作成日時」「更新日時」をいじる手段がなかった為…と思われますが、現在はどうかわからないのでひょっとしたらもう少し良い方法があるかもしれません。
一括でMarkdownファイルをNotionのDBに読み込み
Notionにはimport機能があるので、Markdownファイルを上記のようになるよう加工するスクリプトを書いた上で、一括で読み込んでいきます。
そして、importされたファイルをその後Notion API等を用いて特定のDBに登録していけばバッチリです。
しれっと書いてますが、 ここまでの工程を実現するためにはPython等でスクリプトを書く必要があるので、ある程度そういった作業に慣れている方の協力が必要となります。
私は全部Pythonでスクリプトを書きました。当時はNotionのAPIもGAされていなかった…ような気もするのでなかなかに大変でしたが…今はもっと簡単に作業できるのかもしれません。
移行に際して起きた問題
一部のMarkdownが崩れた
Markdownの変換が少し不十分だったようで、一部のMarkdownの内容は崩れてしまいました。
おそらく改行の数などがポイントなので、ここはスクリプトをもう少し調整すれば解決する内容だった…とは思いますが、差し当たって大きな問題ではないので気付いたときに修正する運用にしました。
各種ファイルの置き換えが必要になった
前述の通り、esaでは、画像等のファイルを自前のAWS S3のバケットに保存することが出来ました。
そのおかげでファイルの移行はしなくて良かった のですが、一方でセキュアにするために、 IPアドレス制限をかけたバケットにファイルを配置していた ので、結果としてNotionからファイルを読み込めないということが起きてしまいました。(Notionではクライアントでなくサーバー側が画像を取得しにいく仕様のようです)
やむを得ないので、画像等は基本的に都度取得し直して貼り直し、みたいなことをしていきました。
S3のバケットのIPアドレス制限を外すことも考えましたが、機密ファイルもアップロードしている可能性を考えてやめました。
基本的に本当に重要なファイルはオンプレのサーバかGoogle Drive等にアップロードしてリンクを貼っていましたが、Notionへの移行によりその流れがさらに加速したように思います。
ベンダーロックインを避ける意味でもそういった使い分けをしたほうがいいかもしれませんね。
esaのWIPが恋しい
やはりesaに慣れていると書きかけのアピール、つまりWIP機能は恋しくなってしまいます。
基本的には、「ページのロック」機能を活用し、 WIPかどうかはロックされているかどうかで判断するようにしています。
しかし、なかなかこの 「ロック」を忘れてしまうことも多く… そしてちょっとボタンがわかりにくいところにあるのもあって、文化として浸透しきっていないのは課題ですね。。
まとめ
今回はだいぶ前の話ではありますがesaからNotionへ移行するときに考えたことややってみたことについてまとめてみました。
それからもう2年ほど運用が進んでいますが、特に大きな問題はなく移行でき、今は完全にNotionでナレッジ共有を進めることが出来ています。
決してesaがダメだったかというとそんなことはなくて、特にWIPかどうかがハッキリわかること、初心者でも使いやすいUI、そしてなによりデザインが可愛いことなど、魅力たっぷりです。
Notionは何でも出来るのが強いですが、逆に言うと何でも出来てしまうので、ナレッジ共有はじめたての組織などはesaでどのようにナレッジ共有が為されるべきかという形作りから入っていったほうがいいようにも思います。
コロナ禍でさらにコラボレーションツールたちの進化も加速しましたし、LLMも今年大ブレイクしたことで、 人的リソースの問題は工夫でカバー出来る時代 になったと感じる昨今です。